北京の物流とは何かを学ぶ

西安旅行で作った陶器がようやく届きました。きっかけは一本の電話。

「あー、わんさん?」

「ああ、わんですが」(私の姓の中国語読みは、女性の名前と誤解されるので、最近は王さんを名乗ってます。

「ほげほげほげ・・・・・・」

「ちょっとまって、いったいなに?」

「荷物が届いたから、引取りに来て。場所は豊台区の(以下不明)」

「ごめんなさい、外国人だから聞き取れない、ゆっくりお願いします。ちなみに名前は**です。」

「そーか、日本人か、だから4文字なのか。場所は豊台区のxingfadi、南4環の外」

「なにー、んなとこまで取りに行かなきゃならんの?」

「あんた、どこ住んでんの?」

「海淀の五道口」

「ああ、遠いねえ。旨く通じないから、北京をよくしってる現地の人に電話かわってもらって、もう一回電話しなさい」

「はあ。。。」

というわけで、中国人の友人にお願いして再度電話してもらいました。やはり場所は正しかった模様。こまかい住所などを聞いて、日を改めてとりに行くことにしました。ここまでが日曜の話。

だいたい、住所までしっかり書いたのに、郵便じゃなくてふつうの運送会社、それも配達なしですか(涙) 学校から現地まで20km、軽く2時間はかかる場所です。

で、バスにのりついで、最後に三輪車までのっかって、行ってきましたよ新発地。北京の南にある流通センター的なところだそうです。付近は市場などが集まっていて、日本でいえば都市のはずれの工業流通地帯というところです。

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この世の果てにある感じの殺伐っぷりです。治安的には最悪ではありませんが、女の子一人でいくようなところではありません。

ようやく見つかった運送会社。荷物は全部露天に積んであるので、雨の前に引き取れるかが勝負です。

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図らずも、中国ビジネスの良い勉強をすることができました。

で、できあがったのがこの茶碗。この背の高さはありえない。。。できが悪すぎです(笑) 職人のおじさんがきれいに修正してくれたので、非常に綺麗になりましたが、もとのバランスの悪さはなんともしがたく。

当初目的の抹茶茶碗としては使えそうにないので、酢の物でも入れて使うことにします。

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同学の日本人女性が作ったほうは、残念ながら輸送中に割れてしまいましたが、接ぐ価値のあるくらい綺麗にできていました。良い思い出の品ができました。

潼関

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北京に戻る列車は三国志で有名な潼関を通りました。馬騰・馬超親子と曹操が戦った場所です。

涸れた川が大地に谷をうがち、深い谷を作っています。谷自体の深さは100mもないのですが、軍隊を進めるには難しい地形だなと思いました。

この景色を見ると、漫画の三国志のイメージそのままです。要衝といわれた意味がよくわかります。

法門寺と博物館

今回の旅行は少人数のため、ものすごく効率よく回ることができました。初日は8箇所まわりました。今日は最終日、8時のバスで法門寺に向かいます。唐の皇帝が保護したお寺で、日本で言えば法隆寺や東大寺クラスのお寺です。もちろん一時衰退してしまいましたが、20年ほど前に地下宮殿から仏舎利や宝物が見つかって再度脚光を浴びました。

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現在、高速道路が修理中ということで、西安から2時間半かけてバスで向かいます。ちょうど小麦の刈り入れシーズンで、道路に小麦を干しているのであぶないったらありゃしません。黄土高原の田舎の景色を存分に味わいます。しかし、帰りの列車に間に合うのだろうかと、かなり不安です。

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法門寺につきました。今回も学生料金の件で切符切りの僧侶に訝られましたが、日本人だとわかると何故かOKでした(笑) 足元は小麦がぶちまけられています。駐車場が物干し場です。完全に敷き詰めているので、観光客が土足で上を歩きます。口に入れるものとして、衛生的にはよろしくないですね。

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ここも例によって紅衛兵によってさんざんな目にあったようです。住職は自らの体に火を放って寺を守ったということでした。現在は由緒正しい寺ということで、伽藍が再建されています。まず地下宮殿を参観し、本堂で般若心経を奉納してきました。ちょうど母方の祖母の命日が近かったので、祖父祖母4人まとめてお経をあげてもらってきました。ここで、自分は母方の祖父の名前を知らないという事実に気がつきました(苦笑)

老いた僧侶の話はさすがに方言が強くて半分くらい聞き取れませんでした。こちらの言うことは聞き取ってくれるので、お経をあげてもらいました。

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伽藍自体は新しいものなので、ふーんという感じです。坊さんの住む場所が非常に大きく、現在の寺の規模を計り知れます。

ここの真価は、隣の博物館です。地下宮殿から発掘された唐代の宝物がずらりと展示されています。どれも国宝級のしろものばかりです。仏舎利を収めた8重の箱や法具をはじめ、皇帝が奉納したオリーブ色の秘色青磁やガラス器などが展示されています。仏舎利自体はありませんでした。どこに保管してあるのでしょう?お釈迦様の舎利をこの目で拝んでお経をあげてきたかったのですが、夢はかないませんでした。

帰りはやはり路線バスです。途中スローダウンしてものすごくあせりましたが、なんとか列車に間に合う時間に戻ることができました。

小雁塔と西安博物館

西安にもどってきました。もう少し時間があるぞということで、小雁塔に向かいます。

入場料は45元とちょっと高め。どうしてかと思ったら、5月に西安博物館が竣工公開されて博物館込みの値段でした。

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小雁塔はかなり広い敷地ですが、人もすくなく涼しい風が吹いています。古いスタイルの風格がとても素敵な塔でした。

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一応、上れるということなので頂上に上ります。頂上部分は地震で崩れていて、展望がきくようになってました。レンガに名前を彫るのはどこの国のおばかさんでも同じだなあと、妙に関心しました。

時間ぎりぎり30分前に飛び込んだ西安博物館ですが、ここは上海博物館なみの規模でした。ここの収蔵品の目玉は唐三彩コレクション。どれもこれも、この20年ほどで西安周辺から発掘されたものが主なようです。これは中国最大のコレクションかも、と思います。

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駆け足で見て回ることになってしまいました。再度訪れなければいけない、と思いを残すことになってしまいました。

耀州窯に青磁を訪ねる

今回、なんで旅に出ようかと思ったかというと、この耀州窯に行くためでした。ここの窯で作られている北宋の茶碗の模造品(出土品の型で抜いて作っているホンモノのニセモノ)が目当てです。従妹が茶道を始めたので、ぜひ国宝クラスの茶碗でお稽古をしてほしいなと思っていました。

本当はスーツを仕立てるためにキープしておいた予算でしたが、思い切って旅費として使うことにしました。

西安駅のバス停から銅川市までは15分間隔でバスが出ています。運賃は22.5元です。黄土高原を抜けて1.5時間ほどで銅川市につきます。そこから地元のバスに乗り換えて博物館に向かいます。仕事してなさそうな案内所のおばちゃんに聞くと、博物館付近に停車するバスがあるといわれて乗り込みました。

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車掌に「耀州窯博物館に行く」と伝えました。銅川のバスターミナルから20分ほど走ると、突然「耀州窯博物館」の文字が見えました。あわてて車掌に「降りる!」といって下車します。「ここじゃない」「いいからここで降りる」と押し問答の末、バスを飛び降りました。

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はたして、ここは目的地でした。バスの反対側の座席に座ってたら行き過ごしていたこと間違いなしです。なんという幸運。しかし、中国では相手の言うことを聞いていると必ず思わぬ結果となります。かなり嫌な国です。

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博物館はほぼ無人でした。これでも国家AAA級の文物保護単位です。

やることなさげな老人がとぼとぼ歩いていて、捕まえてみたら切符売りでした。中に入ると、やはり所在なさげな切符切りの女性が2人。展示室は真っ暗です。いい陶器があるのですが、あかりのため実力がまったくみえません。

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第二展示室にかかりの女性がいました。話をしたら、電気をつけてくれました。すばらしい!へやいっぱいの陶器に命が吹き込まれた感じで、宝石が並ぶような部屋になりました。別に写真をとってもなんとも言わないのが助かります。ここの収蔵品の写真集は日本でも出版されているので日本に帰ったら買いましょう。

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第四展示室は目を見張るものがありました。おそらく東洋最高の水準だと思われる収蔵品です。北京の歴史博物館、首都博物館、上海博物館の陶器展示などは足元にも及びません。上野の国立博物館すら及びません。官窯として宮廷用の陶器を作ってきた耀州窯の名品が窯の歴史を追って一同にそろっています。ここを超えるのは、アジアでは台北の故宮博物院しかないでしょう、そんな気がします。

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その後、香港人同学の希望により轆轤引きにチャレンジです。日本人同学はあっというまにひとつ完成。私も小学校のときに2年ほど習っていたので、あこがれの電動轆轤初体験に苦労しましたが茶碗ができあがり。香港人同学は始めての陶芸体験で苦い思い出ができたようでした。陶房のおじさんが、ものすごいできばえの青磁のどんぶりでまずそうなぶかけ飯を食べていたのが印象的でした。

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ここのお土産部門はなかなかの規模です。ほとんどは現代中国人好みのものばかりですが、一部、出土品の型を使って当時と同じ品質のものを模造しています。「茶碗がほしい」というと、裏手の工場にある倉庫に案内されました。

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ここにある製品は、現在の日本陶磁器の品質からみると、どれもBC級品レベルでした。茶碗はどうして瑕疵があるほうが「味がある」といわれるのかわかります。唐物に一級品質なしです。どこかしらにトホホな欠点があります。中でも状態のいい3種類を買い求めました。北京で飯茶碗として使った後は、一番いいのを従妹のお稽古用にプレゼントする予定です。一番の敵は自分の母親です。欲の皮が突っ張ってるから、全部自分によこせというに違いありません。あとで電話で話したら、案の定でした。

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最後に、博物館のそばにある窯あとの発掘現場を参観しました。やっぱり暇そうなおじさんが切符売り。観客は当然いません。なにしろ、ここの建物、看板が剥がれ落ちています(苦笑) これでも国家の宝なのです。交通アクセスが異常に悪いので、お客もこないのは仕方ないですけど。

黄土高原

今回、西安の北の窯跡を尋ねる旅を組み入れました。プランに同意してくれた同学に感謝です。すくなくとも、若者向けのコースではありませんから。

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車窓から見えたのは黄土高原。岩盤の上に20mほどの黄土がたまっています。がけには穴をうがって部屋ができており、人が住んでいます。この土地では洞窟が夏一番涼しくて冬暖かい環境なのだと思います。

本の知識が目の前に現れて、ちょっと感激しました。三国志の時代はこんなところを旅したんだろうなあと感慨深いものがあります。

明清城壁

城壁に上るのに、40元もとるんですよ! 学生証を出したら、切符売り場のおばちゃんとおじちゃんが討論をはじめました。おばちゃんはわれわれが本科生でないと思っています。おじさんは学生には違いないんだから良いじゃないか、という感じです。今回も割引がききました。ありがとうおじちゃん!

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城壁はすでにビルの下に入ってしまっており、城内を見通すという感じではありません。無数に飛んでいるツバメを目で追っていたら、太陽が沈んでいきました。のんびりと散歩して南大門まで戻りました。

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イスラム街で食事

ぺけぺけと西安の大通りを歩いて食事に向かいます。女の子が銀行のライオンの刻像に乗っかって遊んでいました。

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今日の食事は、事前に下調べをしていった美味しいと評判の店です。イスラム街の中ほどにあります。こっちの食事も、結局四川料理が美味しいみたいなのですが、探して探して探し当てました。「清真老金家水盆羊肉」というお店です。

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水盆羊肉というのは、羊のスープにちぎったナン(パン)を沈めてふやかして食べる料理です。羊が好きな人にはたまらない味ですが、嫌いな人にも別の意味でたまらない味だと思います。

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店の環境は学食レベルです。清潔ではありますが、青い蛍光灯の照らす店内はとてもじゃないけれど日本人の行くところではありません。

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鼓楼と鐘楼がライトアップされていました。

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書院門

「西安は骨董が良い!」と教えてくれたのは聚中縁のだんなさん、韓さんでした。夕暮れの書院門骨董街を散歩します。骨董は予算の都合で買えないので、雰囲気だけ見て回ることにしました。

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夕暮れで人も少なくなっていて、涼しい風が吹いてきて、とても気に入りました。売っているものはみやげ物レベルのものと、文物四宝です。いいものはおそらく店の奥に隠してあるはずです。ま、古いものは国外持ち出しができないので、縁がないとあきらめるしかありません。

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大雁塔

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三蔵法師がインドから持ち帰った経文を納めるために立てられた塔です。周囲は再開発されて公園になっています。なんかこの非人道的な追い出しの顛末はNHKで見たような記憶がありました。きれいなショッピング街に生まれ変わった寺の周辺をぬけて、寺に向かいます。今回の旅では学生証が大活躍です。毎回割引が利きます。私の顔が若く見えるのも幸いしているみたいです。

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ここで、祖父祖母のために写経を奉納しようとしたのですが、ホテルのリュックサックに入れたままのことを思い出しました。仕方ないのでpdfが入ったipod shuffleをもって南無阿弥陀仏を唱えるという奇怪なことをしてきました。

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塔の最上階まで登れます。すでに周囲には高層建築が林立してしまっていてありがたみはまったくありません。20年前にくるべきでした。寺自体も新しくなったばかりで、ありがたみを感じるものはありません。たぶん文革でめちゃくちゃになってしまっていたのでしょうが。とにかくこの歴史のあるお寺が残っているというのはすばらしいことです。

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