ずいぶん待ちましたが、ようやくDe Rosa Corumが届きました。日本でも年に数台しか入ってこない超不人気車です。
じっくり時間をかけて組んだ監督いわく傑作バイクだということなので期待したのですが、最初に数百メートル乗った限りでは軽いNeo Primatoという感じで良くも悪くもまったくバランスの違いを感じることはありませんでした。ホイールもサドルも同じイコールコンディションです。シートチューブのがっちり感など、これがDeRosaらしさなんだなと思います。
しかし50kmくらい走るとなにか違うものを感じます。
とにかく硬いNeo Primatoに対して、Corumは粘ります。インナーで回してるとがっちりとした雰囲気ですが、アウターに入れると鋼らしい粘りがでてきます。アウターからそのままタイヤまで足の筋肉が伸びていくような感じがします。今まで乗ってきた選手用フレームはペダリングの美味しいところが非常に少なく、回すスキルが必要でした。このフレームでは上死点でも下死点でもずっとハムストリングスに負荷がかかり続けます。
かなり走っていてしんどいバイクです。足が地面に直結しているようで全く休めないのです。いままで使わなかった裏側の筋肉までずっと引っ張られ続けます。こいつにのっていると走り続けずにはいられません。一旦足を止めると再び回すのがしんどいので足を止めて休む気にならないのです。
ダッシュをかけるとひたすら加速していきます。硬いカーボンバイク(CR-1 TeamIssue))やNeo Prmatoだと20km,30km,40km,50kmで踏み方をかえなければいけないのです。筋肉の感覚を張り詰めて足を細かくコントロールしなければ加速が止まってしまうのですが、Corumは足を回しさえすればあとはフレームのバネが力を貯めこんで延々と加速を続けます。
登りは普通です。特筆するような登攀力は無いのですが苦手でもありません。平地の巡航力の素晴らしさを知ってしまうと坂は面白くないですね。
実際どのくらいの速度効率が出ているのか、メーターをつないでないのでわかりません。ただ非常に進むフレームであることは確かです。トップチューブは一番前の部分が縦に絞ってあります。ボトムチューブは一番下で横に絞ってあります。そして精度が素晴らしく、両手を離してもブレることなく延々とまっすぐ進むのです。どれだけ凄い加工技術でしょうか。このわずかな形状が進むフレームにしているようです。
走りだすとインナーにいれてゆっくり走ることができません。いつもアウターにいれておかないとフレームのバネが感じられないのです。そのバネ感を使うために足をとめるわけにはいかず。。。。走るバイクではなくて乗り手を走らせるバイクですね。いまどきのカーボンのトップグレードってどんな乗り心地なんでしょう?このCorumはなかなかのものだと思います。鋼のバイクがカーボンに勝てるかというと実際に使ってるプロがいないため答えは出ないと思いますが、重さも走力もカーボンに負けているとは思いません。生産性はまったく期待できない加工ですので、一部のマニアだけが乗り続けるでしょう。
ちなみに納期は「イタリア人がやる気をだしたら」という気の長い話なので将来欲しかったらいまのうちに予約だけ入れておくことをおすすめします。ドリアーノがいつまで続けてくれるかわかりませんからね。
さて、Neo PrimatoとCorumどっちを買う?と言われると、両方買うべきです。Neo Primatoのほうがいろんな意味で重くて硬い男らしい自転車です。常に自分の筋肉に感覚を研ぎ澄ませてまわしていかないと前にすすまないのです。そして登りのときは重量というごほうびがあります。体を鍛えろ、重さがおいしいだろう嬉しいだろうという辛口なごほうびです。下りの安定性や足をとめたときの惰性、部屋に置いた時の姿などどんなシーンにも景色があって良いですね。趣味性が高い自転車です。
対するCorumは前に進むためのマシーンです。速いし突き上げもすくないしバネがビンビンきますがゆっくり走ることを許してもらえない気がします。こちらはプロの仕事用的な性格があります。ちょっぴり淡白です。一般的にはCorumのほうが歓迎されるかと思いますがNeo Primatoより見栄えがしないのが残念ですね。